ニュースレター等 | 2020年12月8日
英国の新たな国家安全保障投資審査制度案が、英国政府の投資審査へ与える影響について
英国は新たな規制制度として、国家安全保障・投資法(NS&I)案を発表しました。この法案は、制定に伴い、国家安全保障上の考慮事項が発生した場合に、英国政府による英国に対する投資の審査方法に大きな影響を及ぼすものと考えられています。
本法案の適用範囲は非常に多岐にわたっており、広範な事業活動に従事する企業が関係する買収や投資のクロージングまでに行う義務的届出の必要条件のほか、英国政府はM&Aにとどまらず、さらに広範な取引に対して遡及的な救済を課すことができます。
また本件規制が適用されうる資産および活動についても広く定義されており、資産からなる買収やゴーイングコンサーンに満たない企業に対する精密な調査が許容されているほか、土地や有形資産、及びデータベース、アルゴリズム、フォーミュラ並びにソフトウェアのようなアイデア、情報技術も含まれます。
手続面に加え、「国家安全保障上のリスク」に結びつく取引について、英国政府は実質的に介入することができます。この新たな規制が実際どのように適用されるのかはまだ明確になってはいませんが、例えば、買収者に資金を提供するなど、直接・間接を問わず、買収に関与する可能性のある人物について、政府による解釈の余地を大きく残している可能性があります。
英国での取引に関連した事業を進める上で、新しい規制への対策として現時点で実践することが可能な重要なポイントは以下のとおりです。
- 本法案はまだ制定されていないため、企業やアドバイザーは、英国政府と協力して、本法案の最終段階に働きかけを行う機会をとらえましょう
- 義務的届出制度の対象となる取引には、適切なクロージング条件を含める必要があります。これにより、サイニング時とクロージング時に時間的隔たりがある英国との取引の件数を大幅に増やすことができるかもしれません
- 本法案は非常に多岐にわたっており、その内容が明らかになるまで時間がかかるということを念頭に置きましょう。今後の取引における初期段階のプランニングとデューデリジェンスでは、本法案の適用を受ける可能性があるか、また適用される場合にはどのような影響を受けるのかを考える必要があります
- 買収者は、自身のビジネスおよび自身が提案する買収構成が英国政府の懸念する国家安全保障上のリスクとして捉えられる可能性はないかを検討してみましょう
- 売り手は、英国政府の危惧する国家安全保障上のリスクを特定し、取引における英国政府の実質的な介入のリスクを評価するために、潜在的な投資家および買収者に対してどのような初期段階のデリジェンスを行うのかをよく検討する必要があります
PDFをダウンロード リストに戻る