ロシア憲法裁判所が並行輸入に関する見解を発表

ロシア憲法裁判所は2018年2月13日、並行輸入に関するロシア民法典(「CCR」)の以下の規定の合憲性について判断しました*

  • CCR第1252条2項 - 商標侵害に適用される中間的救済
  • CCR第1487条 - 商標権の国内消尽の原則
  • CCR第1515条1項および2項 - 商品の模倣品認定、並びに模倣品の市場からの排除および廃棄の請求に係る商標権者の救済手段
  • CCR第1515条第4項1 - 1万ルーブルから50万ルーブル(約143ユーロから7万1430ユーロ)の賠償金の支払いを侵害者に対して要求する商標権者の権利(模倣品の価値の二倍またはライセンス料相当額の二倍に相当する賠償金や補償金に代わるものとして)

憲法裁判所は、審理の結果、上記の規定は合憲であるとの判断を下しましたが、加えて、これらの規定が憲法の基本原則に反しない方法で適用されるための指針を明らかにしました。これらの指針は、ロシアにおける知財権者と並行輸入業者との長年の議論が反映されたものになっています。

この2月13日の決定No.8-P(「同決定」)においては、憲法裁判所は、知財権の国内消尽の原則は、ロシア憲法に違反するものではないとするものの、裁判所は並行輸入による侵害と模倣品輸入による侵害とを区別して取り扱うべきであると述べています。また、同決定では、並行輸入品の廃棄はそれらが不良品である場合、もしくは廃棄によって安全性が確保されるか国民の生命や健康が保護されるなどの場合にのみ認められるべきであるとしています。

今後、ロシアの裁判所は、同決定に基づいて、並行輸入事件と模倣品についての商標侵害事件とを同等に判断せずに、並行輸入業者にはより寛容な処分を下すことになります。しかしながら一方で、憲法裁判所は、このような寛容な処分は、それによって特定の状況下で商標権者が模倣品によって被る被害と同等の被害を受けることになるような場合には、適用されるべきではないとも述べています。

また、憲法裁判所は、同決定に基づいて、並行輸入による侵害に対する救済と模倣品における侵害に対する救済とが明確に区別されるように、国内法を改正することをロシア議会に求めています。

さらに、憲法裁判所は、反トラスト法上の例外としての知財権の行使は、商標権者の不当な又は権利濫用的な行為を正当化するものとして解釈されるべきではないとも述べています。したがって、ロシアの裁判所は今後、商標権者の不正な権利行使によって並行輸入に対して執行される法的措置が、市民の生命や健康を害するか、あるいはその他公益に多大な影響を与える場合には、かかる法的措置の一部又は全部を拒否する可能性があります。

決定理由の中では、不正な権利行使の例がいくつか挙げられています。例えば、商標権者の行為が不公正な価格政策を実行するものであったり、ロシアの消費者に影響する商品、特に生活必需品の流通に不当な制限を課すことを目的としている場合には、並行輸入を侵害とする商標権者の請求を裁判所は認めるべきではないとしています。また、憲法裁判所は、ロシア連邦に対して外国政府が正当な法律手続きを取らず、且つ国際協定に反して科している制裁措置を商標権者が遵守すること自体、不正な権利行使とみなされる可能性があるとしています。

また、同決定では、商標権の国内消尽に係る規則は、ロシアが批准している国際協定に基づいて適用されるべきであるとしています。したがって、ユーラシア経済連合協定附属書26のセクション16において商標権の地域内消尽の原則が定められていることからすると、実際には、その地域内消尽の原則がロシア国内消尽に優先すべきものと思われます。

同決定は2018年2月13日に発効しており、並行輸入による商標侵害に対する新たな解釈が適用されることになるので、近い将来、並行輸入に関するロシアの裁判所の決定を大きく変えるものと思われ、今後の動きが注視されます。

ロシア憲法裁判所は、ロシアで唯一、国内の法律や条例の合憲性を決定することおよび憲法に則った法律の解釈を認められている裁判所です。憲法裁判所の決定は最終的なもので、ロシアのあらゆる裁判所はその適用義務を負っています。


ロシア憲法裁判所は、ロシアで唯一、国内の法律や条例の合憲性を決定することおよび憲法に則った法律の解釈を認められている裁判所である。憲法裁判所の決定は最終的なもので、ロシアのあらゆる裁判所はそれらの適用義務を負う。


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