強力なブランドの創作および構築:様々な法律分野の弁護士から成る専門家チームに極めて早い段階から任せることが成功の鍵

消費者の多くは、有名なブランドを一目で認識することができます。そして、特定のブランドを信頼することで、長年その製品やサービスを愛用し、他者にもそのブランドを勧めます。そのため、ブランドの構築は企業にとって重要な問題となりますが、すべての企業がマーケティングや法律の観点から強力なブランドを構築するためのネーミング方法を心得ているわけではありません。

弊所では、グローバルなネットワークを活用して、ブランドの創作、商業化、保護に包括的に取り組む「トータルブランドケア」を提供しております。今回のインタビューでは、東京事務所代表パートナーのロイド・パーカー氏が、ブランドの創作や構築において企業が検討すべき事業上かつ法律上の問題について概説しております。

国を問わず、企業はブランドの創作においてどのようなプロセスを踏むのが良いでしょうか?

パーカー: そのプロセスは3段階に分けることができます。 1つめは、新たなブランド名の考案で、2つめは、それを商標として使用かつ登録できる可能性を探るためのクリアランスサーチです。3つめは、登録を取得するための出願手続きです。これらのどの段階においても重要な検討事項がありますが、ブランド作りにおいて常に成功する企業には1つの共通点が見られます。

では、ブランド作りにおいて常に成功する企業に見られるその共通点についてお聞かせください。他の企業が行わない特別なことをするのでしょうか?

パーカー: はい。端的に言うと、成功する企業は、様々な法律分野の弁護士から成る専門家チームをブランド創作の初期段階から用いているという点です。

ブランドの創作には、企業内の次のような多数の異なる部署の担当者や外部の専門家が関わっています。

  • 研究開発部門:  新製品の開発時点から関わり、同部門が当初名づけたプロジェクト名が定着し、そのまま商標として採用される場合もある。
  • 営業部:  様々な段階で関与するが研究開発段階の後半に関わることが多く、独自のブランド感をもっている。
  • マーケティング部門:  ブランド名候補の提案、マーケティング戦略、販売促進物などの作成において関与。
  • 外部のクリエイティブ・エージェンシー:  ブランド名候補の一覧表の作成を引き受ける。
  • 商標部門:  クリアランスサーチの実施や商標出願手続きが近づいてきた時点で関与。
  • 外部の法律事務所:  商標部門からクリアランスサーチや出願手続きを委託されることがある。
  • 法務部またはコンプライアンス部門:  ラベル表示、パッケージ、その他の規制事項など、商標に関連する法律問題の取り扱いに関与することがある。
  • 上級役員、取締役または場合によっては社長:  新製品に係る特定のブランド名を推奨する目的で関わる可能性も。

つまり、たくさんの部署の担当者が関わってくるわけです。しかし、多くの企業では、これらの部署間で縦割り型の業務が行われており、十分なコミュニケーション、理解、チームワークが発揮されないため、マーケティング面および法律面の両方から強力なブランドを構築する機会が失われているのが現状です。

そのため、このような縦割り型の業務を行っている企業の場合、様々な法律分野の弁護士から成る専門家チームに早い時点から業務を任せることで、より効果的かつ効率的に強力なブランドを構築することができます。

最初の段階であるブランド名の考案ですが、成功の秘訣は何でしょうか?

パーカー: 1つは、マーケティング面と法律面の両方からバランスの取れたネーミングを選択することが重要となります。例えば、営業部門の担当者などは、消費者に分かりやすく販売しやすいという理由で、商品/役務の性質を記述した単語を選択することがあります。しかし、そのような記述的な語は法律的な観点から登録や保護の対象とはなりません。たとえ、ある程度の識別力に基づいて登録が得られたとしても、保護範囲が狭くなります。

その一方で、マーケティング部門の担当者は、一見クリエイティブで人気が出そうなネーミングを選択する傾向があり、企業はその選択に執着し、相当な時間や多額のリソースを投入することがあります。しかし、商標部門が関与した後に、すでに他社が同一または類似の商標を登録しているため、登録できないと判明する場合があります。

2つめは、グローバルな視野で考えることです。つまり、自国の市場で受けると感じたネーミングでも、外国では、適切ではない、インパクトに欠ける、又は、法律上登録不可能という場合もあるということです。例えば、外国の文化、言語、宗教などに照らし合わせて不適切な意味をもつ言葉などがその一例です。また、インパクトに欠ける語も然りです。日本では英語の言葉がオシャレでカッコよく聞こえますが、英語圏の国では、単なる普通の言葉に過ぎずインパクトを欠くことがあります。また、登録要件の観点から、例えば、フランス語の言葉は、日本ではフランス語が解されないため、記述的な語ではないと解釈され登録可能となりますが、フランスや他の欧州諸国で出願された場合には、単に商品やサービスの性質を記述する言葉に過ぎないとして登録不可となります。

3つめは、自社が経験やリソースを持たない分野については外部の専門家に頼るという点です。そのような専門家の一例として、クリエイティブ・エージェンシーが挙げられます。しかし、エージェンシーの質には優劣があるので、その選択には入念な検討が必要となります。また、たとえ高く評価されているエージェンシーであっても、特定の企業や特定のプロジェクトには適していない場合もあります。エージェンシーの利用を検討する際には、以下の点に留意すべきです。

  • エージェンシーの費用はかなり高額となりうるので、まず、そのブランド・プロジェクトはエージェンシーの利用に値するほど重要なのか考えねばなりせん。そして、重要であると判断された場合には、予算枠を設定し、その予算内でどれだけのサービスを受けられるか見極めなければなりません。例えば、ブランド名候補のリストを作成して貰うだけか、その他のサービスも必要となるのか、エージェンシーは対象国において豊富な経験があり、その国の言語や文化に照らし合わせて適切なブランド名を選択できるのか、エージェンシーとの連絡窓口には社内のどの部署が担当するか、などという点が挙げられます。
  • そして、エージェンシーができる範囲には限界があると理解することが重要です。なぜなら、クリエイティブな発想という点では、エージェンシーは非常に優れていますが、法律の十分な理解や法律上問題となりうる事項を取り扱える人材をもつエージェンシーは、ほぼ皆無に等しいと言えます。以下はよくあるパターンの一例です。
    • 多額の費用や時間を費やしてエージェンシーにブランド名候補の一覧を作成して貰ったところ、マーケティング面からインパクトの強い良い名称が多数含まれていたので満足した
    • しかし、商標部門が行ったクリアランスサーチや外部の法律事務所の見解では、提案されたブランド名は法律上脆弱である又は先行する同一又は類似の商標が存在するので登録できないことが判明
    • そのため、再度同じプロセスを踏むはめになり、余分な費用がかさみ、新製品の発売時期も遅らせざるを得なくなった
このような事態は、適切なクリアランスサーチを実施できる十分なリソースを備えているエージェンーが皆無である(ほぼ皆無)であることに起因しています。一部のエージェンシーでは、同一商標の検索などは実施できても、類似商標の検索を含む完全なクリアランスサーチをできる人材は擁していないと言えます。

ホーガン・ロヴェルズは法律事務所ですが、この1つめの段階であるクリエイティビティという面から、どのようなサポートを提供できますか?

パーカー: 通常、法律事務所は、クリエイティブな分野には関与しません。しかし、ホーガン・ロヴェルズは普通の法律事務所ではありません。この分野でのクライアントの切実なニーズが存在することを認識していますので、以下のような革新的なサービスを考案し、提供しております。

  • 弊所では、多数のエージェンシーと協力関係を築いており、クリエイティブな面と法律面との両方を組み合わせたサービスをブランド創作プロジェクトの初期段階から採用して頂くためのシステムを設けております。また、エージェンシーの層は多岐に及びますので、各企業、各プロジェクトにとって最適なエージェンシーを推薦させて頂くことができます。プロジェクトの開始時からクライアントとエージェンシーと協力体制を築きますので、全員がプロジェクトの詳細やクライアントの最終目的を完全に把握している状態で業務を進めていきます。それによって効率性が高まり、より良い結果をより迅速に得ることができます。例えば、エージェンシーがブランド候補を挙げ、弊所がその語の記述性や否定的な意味合い、先行同一商標、称呼上の検索、先行類似商標の簡易検索などを行い、初期段階において効率的なアドバイスを提供します。それに加え、特定のブランド候補に対する消費者の反応をみるため、世界各地の弊所のリソースを活用して機密ベースの簡易的な市場調査を実施することもできます。
  • 上述の通り、重要なのは、様々な法律分野の弁護士から成る専門家チームを初期段階から用いることです。そして、クライアント企業内の縦割り型業務の壁をなくすことで、瞬時にコミュニケーションを図ることや、各部署の専門知識やスキルを1つに結集することができます。例えば、クリエイティブな分野の担当者と法律分野の担当者とが緊密に打ち合わせすることで、マーケティング上の観点から魅力的なブランドを考案し、プロジェクトを進める前にそのブランドの法律上の強さを測るためのストレステストを行い、時間のロスを防ぐことができます。このような複数の分野からのアプローチを可能にするため、現在、弊所では、企業内の担当部署間や外部専門家とのコミュニケーションの効率化や迅速化を図るためのソフトウェア・プラットフォームを開発中です。

2つめの段階であるクリアランスサーチの実施においてはどうでしょうか?

パーカー: クリアランスサーチの目的は、選択されたブランド名が販売対象国でその指定商品/役務に関して商標登録を得ることができるか否かを決定するためのものです。この段階では次の点に留意せねばなりません。

  • 先行商標の存在により、ブランド名候補の商標登録が阻止される法律上のリスクが存在します。それは、商標が同一か類似である、指定商品/役務が同一か類似である、混同の可能性が存在するなどの理由に基づきます。
  • また、現実的なリスクの査定も必要となります。つまり、たとえ法律上のリスクがあっても、それがどこまで現実的なリスクなのか確定する必要があるということです。例えば、先行商標の権利者は、異議を申し立てる法的権利があっても実際に申し立てを行うのか、その可能性を探ることです。具体的には、その権利者が競合他社なのか、又はその事業規模、財政的な余裕、法律上の強さ、法律上の紛争に関与する意図、過去に権利を行使してきた実績などを総合的に検討します。
  • そして次の段階として、法律および現実的な観点からの問題解決方法を検討せねばなりません。例えば、先行商標に関する問題の解決方法として、ブランド名や指定商品/役務を若干変更することや、先行商標を買収すること、先行商標を不使用に基づいて取り消すこと、取消しの可能性を武器にして権利者が異議を申立てないよう合意を取り付けること、自社が先行商標を有している他国でその権利者が登録を得られるよう便宜を図ることと引き換えに、先行商標との包括的な共存契約を取り付けることなどが挙げられます。

これらの点は、1ヶ国でクリアランスサーチを実施する場合や、障害を克服すべき先行商標が1つに限られる場合などは、それほど困難ではないかも知れませんが、大抵の場合、どの企業も世界各国で同じブランド名を使用したいことから、すべての国での調査が必要となり、それに伴って各国の言語、文化、法律、慣習、権利者との交渉方法なども検討せねばなりません。また、グローバル化が進んだことで、多くの国では商標登録数が増えているため、自社商標の登録を阻みうる同一又は類似の先行商標が検出される可能性も高まっています。

ホーガン・ロヴェルズは、このような問題の解決方法の考案に長けており、世界の各都市の事務所で、日々、複数の法域を網羅する複雑な案件に取り組んでおります。直営の事務所を擁していない国では、その国で定評のある大手商標事務所と提携しており、年間150カ国以上での商標業務を取り扱っております。

最後の段階である商標の出願登録手続きについてはいかがでしょうか?

パーカー: この段階で鍵となる点として、 対象国での出願経験が豊富で商標局での手続きをスムーズに進められる弁護士とのネットワーク、そのネットワークの効果的な監視、業務の管理や商標局での期限の遵守を可能にする商標ポートフォリオデータベース・ソフトウェア、出願前に解決できなかった抵触する先行商標の問題に対応できる法律の実務経験が挙げられます。

ホーガン・ロヴェルズでは、このような業務においても極めて長けており、その事実は、世界の多数の大手ブランド保有企業が貴重な自社ブランドの管理を弊所にお任せ下さっていることや、世界的に著名な法律事務所評価機関から毎年多数の賞を受賞していることにより証明されております。

<ロイド・パーカー氏 略歴

ホーガン・ロヴェルズのIPMT(知財、メディア、テクノロジー)部門アジア代表であり、あらゆる業界のクライアントに商標ポートフォリオ管理や権利の行使についてアドバイスを提供しております。知財弁護士として25年以上の経験があり、弊所の海外事務所や世界150ヶ国超の他事務所との協力体制を通して、世界全域を網羅する総合的な知財サービスを提供(係争案件および非係争案件を含む)。世界最大手のマネージメントコンサルタント会社での豊富な経験を活かし、ビジネス、戦略、実務のあらゆる観点から法律アドバイスを提供しております。


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